2012年3月26日月曜日

グーグルのサジェスト機能による表示の差止めが認められた事例

 もう既にいろいろな所で話題になっておりますので、やや遅きに失した感がありますが、「インターネット法務の部屋」というタイトルのブログならば取り上げない訳にはいかない(単に自分でそう思い込んだだけですが・・・)事件ですので、簡単に書かせて頂きます。
(まだ実は忙しさが続いているため、本日も簡単めの記事であることをご容赦下さい)

1.
(以下、日経新聞の記事、及び毎日新聞のウェブ記事を参考にいたしました)

 本件は、ある日本人男性がグーグルに対して申請した仮処分事件です。

 具体的には、「グーグル」で当該男性の実名を入力すると、グーグルのサジェスト機能(ある単語を入力すると、その単語の他に関連する単語を多数表示することで、より検索の結果自分が求めているサイトにたどり着きやすくさせる機能)が働き、男性の実名に加えて犯罪を連想させる単語が検索候補として表示され、その単語を選択すると、当該男性を中傷する記事が検索結果の上位に並ぶ、という事案でした。

 こうした検索機能、検索結果のため、男性は会社を解雇されたり、内定を取り消されたりしたため、この男性は、グーグルに表示の停止を求めたのですが、グーグルに応じてもらえなかったため、昨年10月、サジェスト機能の表示を差し止める仮処分を申請しました。

 東京地裁は、3月19日付で、男性側の主張を認め、差し止めを認める決定をしたとのことです。

 そこで男性側は決定を受け、22日までに表示を停止するよう改めて認めたが、グーグルは表示の停止には応じていないとのことです(毎日新聞によれば、グーグルは決定に従わないことを回答してきたそうです)。

 グーグルは、「会社の規定上、表示停止すべき事案に該当しない」(日経記事より)「単語を並べただけではプライバシー侵害に該当しない。単語は機械的に抽出されており恣意的に並べているわけではない。」「社内のプライバシーポリシー(個人情報保護方針)に照らし削除しない」(毎日新聞より)、などと主張しているとのこと。

 なお、本件、男性側は当初、グーグルの日米両法人を相手取っていましたが、日本法人が「削除権限は米法人にしかない」と主張したため、米グーグルのみが仮処分事件の当事者になっていたようです。

2.
 昨年の10月に仮処分を申請して今月に決定が出た、ということですので、申請から決定まで5ヶ月もかかっていることになります。ここからしますと、本件は、仮処分事件ではありますが、双方が準備書面のやりとりを行うなどして、比較的時間をかけて審理が行われたのではないか、ということが伺われますね。まあ、米国法人への申立書の送達とかに時間がかかった可能性もありますが・・・。(あと、外国法人が当事者の場合、どうしても書面の翻訳に要する時間がかかりますので、手続は日本人・日本企業同士の場合のように迅速には進まないという事情もあるでしょうが)

 そうしてじっくり審理した結果の決定に対して、グーグルは従わない、ということですか・・・。うむむ・・・。
 仮処分を認める決定に対しては保全異議の申立てができますので、グーグルとしては、保全異議を申し立てる、という趣旨かもしれませんけれども。(ちなみに、保全異議の申立てには、いつまでにしなければならないという期間の定めはありません)

 まあ、こういうグーグルの対応を受けて、男性側の代理人も、何とか風向きを変えようとして今回、マスコミに本件仮処分決定の情報を流したのだろうとは思いますが・・・。

 マスコミでここまで大きく話題になって、なおグーグルが本件に対するスタンスを変えないのかどうかが今後注目されるところです。

 しかし、グーグルに対して何か法的アクションを起こそうと思ったら、日本法人が相手では原則として駄目で、米国本社を相手として行う必要があるということなんでしょうか。そうだとすると、アクションを起こす側の負担は非常に重たいものがありますね。この点は、さすがにどうにかならないのかなあ、という気がしております。

(ちなみに、男性側の代理人弁護士は富田寛之先生とおっしゃる方ですが、富田先生は、カリフォルニア州のロー・スクールに留学経験のある方のようですね。http://www.c-lf.com/ )

* * *

 以上、ほとんど直感的な感想レベルですが、本件に関して思ったことを書かせて頂きました。

1 件のコメント:

  1. the last pappara2012年3月31日 13:52

    すげー!「かわいの」まで入れると先生お出ましになりますよ!!私はフルに入れても候補が出ない・・・とほほ。

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