2012年5月10日木曜日

消費者庁、インターネット消費者取引に係る広告表示に関するガイドラインを一部改定(口コミサイトへのステマに関する事例追加)

1.
 さて、日経新聞の5月10日付朝刊にも掲載されていましたが、昨日(5月9日)、消費者庁は、昨年10月28日に公表した「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」を一部改定したことを公表しました(以下、改定後の当該文書を「ガイドライン」と表記します)。
 本件に関する消費者庁HP中のリリース資料はこちらです。↓
 http://www.caa.go.jp/representation/pdf/120509premiums_1.pdf

2.
 改定された内容は、当該ガイドラインの第2の「2 口コミサイト」の「(3)問題となる事例」に、以下の事例を追加した点です。

「◯ 商品・サービスを提供する店舗を経営する事業者が、口コミ投稿の代行を行う事業者に依頼し、自己の供給する商品・サービスに関するサイトの口コミ情報コーナーに口コミを多数書き込ませ、口コミサイト上の評価自体を変動させて、もともと口コミサイト上で当該商品・サービスに対する好意的な評価はさほど多くなかったにもかかわらず、提供する商品・サービスの品質その他の内容について、あたかも一般消費者の多数から好意的評価を受けているかのように表示させること。」

 今回の改定は、消費者庁の今回のリリース文自体にも書かれておりますとおり、今年話題になった、「食べログ」における「やらせ投稿」(ステマ)を念頭に置いたものですね(もっとも、リリース文には「食べログ」という固有名詞は書かれていませんが)。

3.
 さて、口コミサイトにおける投稿についての景品表示法上の問題というのは、ガイドラインの第2の「2 口コミサイト」の「(2)景品表示法上の問題点」にも書かれていますとおり、

「口コミサイトに掲載される情報は、一般的には、口コミの対象となる商品・サービスを現に購入したり利用したりしている消費者や、当該商品・サービスの購入・利用を検討している消費者によって書き込まれていると考えられる。これを前提とすれば、消費者は口コミ情報の対象となる商品・サービスを自ら供給するものではないので、消費者による口コミ情報は景品表示法で定義される『表示』には該当せず、したがって、景品表示法上の問題が生じることはない。」(①)(下線・太字は筆者による。以下、引用部分につき同じ。)

という点が議論の出発点となります。

 この点、わかりにくいかもしれませんので、もう少し敷衍しますと、景品表示法上の「表示」とは、同法上、以下のように定義されています。

「顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示であって、内閣総理大臣が指定するもの」(景品表示法2条4項)

 上記の定義内容からもわかりますとおり、景品表示法上の「表示」は、あくまで「事業者」が主体となって行うものでなければならない訳です。

 したがって、(上述しました通り、)レストラン等の口コミサイトにおける投稿情報は、通常は、事業者ではなく、一般の利用者すなわち消費者が投稿するものですから、口コミサイトの投稿情報のうち、事業者自身が投稿したもの以外は、本来的には景品表示法における「表示」には該当せず、景品表示法の規制の対象外、ということになる訳です。

4.
 しかし、今回問題となったように、事業者(本件であれば、レストラン経営者)が専門業者に依頼して、自らのレストランについて良い内容の投稿を書かせていた場合には、一定のケースでは事業者自身が表示をした、したがって、景品表示法の規制の対象である「表示」に該当する、と評価してもいいのではないか、という考え方が出てくることになります。

 この点は、今回のガイドラインの改正前のバージョンでも既に記載されておりまして(今回の改定後のガイドラインでも引き続き記載されています)、ガイドラインの第2の「2 口コミサイト」の「(2) 景品表示法上の問題点」の部分に、上記3の冒頭の①の記載に続けて、

「ただし、商品・サービスを提供する事業者が、顧客を誘引する手段として、口コミサイトに口コミ情報を自ら掲載し、又は第三者に依頼して掲載させ、当該『口コミ』情報が、当該事業者の商品・サービスの内容又は取引条件について、実際のもの又は競争事業者に係るものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるものである場合には、景品表示法上の不当表示として問題になる。」(②)(下線は筆者による)

 と記載されております。

 そして、ガイドラインには、上記記載(上記②の記載)に続けて、今回新たに追加された事例(上記2の青字部分)が、他の事例と共に記載されている訳です。

 以上より、上記②の部分の記載のロジックは、景品表示法上における「事業者による表示」という概念を一定程度規範的に解釈しているものと言え、今回のガイドラインの改定は、そういった規範的解釈の一事例を追加したものである、という評価になるものと私は理解しております。

* * *

 今回の記事は基礎的な内容を整理しただけですが、本日はこんなところで・・・。

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